プロのオペラ歌手になるために必要な資質とは?
みなさん!こんにちは!車田和寿です!
前回のレッスンでは、プロのオペラ歌手になるためにはどのようなステップを踏んでいけばよいのか、という事についての話をしましたが、今日はいったいプロのオペラ歌手になるには、どのような資質が必要なのかという話をしていきたいと思います。
オペラ歌手と言えば、真っ先に考えるのが声の事だと思いますが、プロになるには、それ以外にもたくさんの資質が必要になります。勉強の早い段階でその事を理解して、声だけでなくそういった資質を一つ一つ磨いていくことが非常に重要なんです。
と言うわけで、早速プロのオペラ歌手になるために必要な資質について話をしていきましょう!
声
オペラ歌手になる上で最も必要な物は声になります。これはその人の才能といっても良いかもしれませんが、やはり生まれ持ったものが将来を大きく左右します。
僕も日本にいるときは声の才能などというものを意識する事はほとんどありませんでしたが、ドイツに来てからは、“声”の存在そのものを意識するようになりました。
本当に信じられない話ではあるんですが、大して勉強しなくても大きな歌劇場ですぐにでも歌えてしまうような声を持った若い人というのが結構いるんです。特に東ヨーロッパの国々には、そのように良い声を持った人達が沢山います。
これは僕にとっては本当に大きな衝撃でした。これぞまさしく才能です。
とは言え、そういうものすごい才能のある声がなければオペラ歌手になれないというわけではないので心配しないでください。
なぜなら本当の声というのは、長い時間をかけて作り上げていくものだからです。長い時間をかけて育てていくものなんです。正しい歌い方を勉強しようとおもったら、むしろ最初から良い声は出ません。
いくら生まれつき良い声を持っていても、ちゃんんと勉強しなければ、歌手活動2年で崩れます。
本当に大事なのは、しっかりした声を作り上げると言う事なのです。
自分の声に可能性がある、と少しでも感じることができれば、チャレンジしてみる価値が十分にあると思います。
優れたテクニック
自分の声に可能性を感じたら、その次に必要となるのが、声を扱うテクニックになります。
これまで数多くの歌手たちが、実に様々なテクニックで歌ってきましたが、良いテクニックというのは必ず存在します。
逆に言えば、悪いテクニックというのもかなりの割合で存在しています。
声を育てるには、良いテクニックで歌い続ける事が必要になります。良いテクニックで歌っていると、歌うのに本当に必要な筋肉が鍛えられて、声が本当に育っていくんです。
さっきも話しましたが世の中には本当に良い声を持った歌手たちが沢山います。でも彼らが皆良いテクニックを身に付けているかというと決してそうではありません。良い持ち声に頼ってなんでも歌えるので、テクニックを疎かにしてしまう事が多いんです。そしてこういう歌い方をすると年をとるとすぐに崩れます。
なので良いオペラ歌手になりたいと思ったら良いテクニックを身に付ける必要があります。良いテクニックとは何なのか、という話はこのチャンネルでも沢山していきますから、知りたい人はちゃんと見て勉強してください!
音楽性
テクニックと同じぐらい重要なのが音楽性になります。なぜならレッスンに通って磨き上げたテクニックをどのように使えば良いかを示してくれるのは音楽だからです。
これは最初のレッスンでもしましたが、まずはこう歌いたいという気持ちがあって、それから声を出します。
たまに何も考えないで声だけだして歌っているかと思われる人もいますが、恐ろしいです。
そしてこう歌いたい、という気持ちがちゃんとした音楽性によって裏付けされていることがものすごく大事なんです。
いくら自分が歌いたい気持ちが強くても、そのイメージが作曲家のイメージしたものとかけ離れていては、出来上がる歌はめちゃくちゃです。音楽性のかけらもない歌という事になってしまいます。
いくら良い声とテクニックがあっても、ここができなければプロには慣れません。そんな音楽性のない歌なんて誰も求めていないからです。
なので、高い音楽性を身に付けるのはプロのオペラ歌手になるには必要不可欠です。音楽性を身に付けると、音楽がどのように歌ったらよいのかを教えてくれます。自分がまだ未熟でそのようにうたえないのであれば、どこが足りないのかを教えてくれます。
良い音楽性というのはオペラ歌手に限らず音楽家にとっては最良の道しるべになります。
ちなみに音楽については、もう一つのチャンネル【音楽に寄せて】の方で沢山話をしていますから、プロになりたいと思った人は、いろんな動画をみてぜひ勉強してください!
言葉(外国語)
音楽性と共に歌手にとって大な物があります。それが言葉です。歌詞の事です。オペラ歌手に限らず、声楽家としてプロを目指す人にとっては、この外国語の言葉に対する感性を身に付けることは非常に重要になります。
これはあくまで自分の体験ですが、高校生や大学生の頃はイタリア語やドイツ語の意味は全く理解できていませんでした。歌詞は何度も繰り返し練習しますから、それっぽく聞こえるようにはなるのですが、結局のところオウム返しなんです。曲の意味はだいたい分かっているつもりでも、今その瞬間に歌っている言葉の意味が実感として全く感じられない・・・・。でもやっぱりこれでは人に訴えかける表現は決してできるようにはなりません。
今その瞬間に歌っている言葉の意味が実感できて、初めて本当に観客に何かを届けることができるようになります。素晴らしい声だけでは、すぐに飽きられてしまいます。
言葉と音楽は表現において非常に密接に関係しています。言葉を理解することができれば、どのような表現をすれば良いか、僕たちを自然と良い方向へと導いてくれるでしょう。
日本人が複数の外国語を身に付けるのはそう簡単ではありません。僕はドイツ語と英語が喋れますが、イタリア語とかフランス語はあんまりしゃべる事はできません。でも僕はドイツ語を一生懸命勉強したので、他の外国語であっても時間さえかければ、しっかりとした準備をすることが出来ます。
まずは一つ外国語を徹底的に勉強して身に付けてください。そうすると他の外国語でも言葉の扱い方、アプローチの仕方というのが分かるようになってきます。
演技力と立振る舞い
かつては、オペラ歌手に求められるものはあくまで歌唱力であり、演技力は二の次でした。しかし最近はそんな事も言ってられなくなりました。歌手に求められる演技力は一昔前と食らべてはるかに大きくなっています。
どんなに歌がうまくても、演技ができないと判断されてしまうと、オーディションで落とされてしまうという事がありますので、ある程度の演技力を身に着けることは今後のオペラ歌手にとっては必須と言えるでしょう。
それとはまた違いますが、歌手は舞台上での対振る舞いを身に付ける必要もあります。オペラ歌手の中はいつもふらふらしながら歌っている人もたまにいますが、そういうのはみっともないです。僕たちには楽器がありませんが、自分と言う楽器を内側からきちんと律して、舞台という空間を支配しないといけないんです。
これはまた別な機会に話をしたいと思いますが、マリア・カラスとかシュヴァルツコプフといった一流のプリマドンナ達は、このような立ち振る舞いというのを身に付けていました。空間を支配していました。
こういう事についてもぜひ考えてみて下さい。
自分を信じる力
さて、必要な資質を5つ挙げましたが、もう一つ必要な資質があります。それは自分を信じる力です。僕たちオペラ歌手は一度舞台に立ったらある意味一人きりです。
舞台の上では、パートナーが出入りを間違えたり、あるはずの小道具がなかったりと、小さな事故がが沢山起こりますし、歌詞が突然でてこない、なんてこともあります。でも誰も助けてくれる保証はありません(もちろんたまに周りに助けられることもあります)。
一度舞台に立ったから最後まで演じ切るしかないのです。それを成し遂げるためには自分を信じる力が必要になります!
また勉強をする上でもいろいろな悩みが出てきます。悩むことは決して悪い事ではありません。だけど自分が声楽をやるべきなのかどうか、その根本的な部分では迷ってはいけません。自分を信じられる人だけが、最後まで長い勉強をやり続けることができるのです。
おわりに
というわけで今日はオペラ歌手に必要な資質の話でした。プロになるためには声以外にもやる事が沢山あります。
いつかプロになりたいという気持ちが少しでもあるのであれば、とにかく外国語や作曲家についてなど、今から勉強を始めてください!
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