歌が上達するための3か条
みなさん、こんにちは!車田和寿です。
今日は、声楽、オペラを勉強している人のために、歌が上達する上で最初に抑えておくべき3つのポイントを話したいと思います。
今日話をする3つの事は僕たち日本人が声楽を学ぶ上で最も大切なことです。すでに音大に入って勉強している人もいると思いますが、この3つを自覚して勉強する事で、その後の伸びかたというのが大きく変わっていきます。
これはこれからこのチャンネルで動画を発信するにあたって、僕の基本的な考えでもありますので、今日はそれを一緒に見ていきましょう。
癖をとる
日本人が歌を始めるうえで、最も大事な事が、癖をとるという事になります。声楽家というのは、声という、人間の体を楽器として音楽をしています。
なので、どんなに優れた歴史的な名歌手であっても、歌手には必ず多かれ少なかれ癖というものがあります。優れた歌手程その癖は少ないですが、まったくない人というの僕は一人も知りません。
僕たちは機械ではないので、それはある意味当たり前の事だと思います。
ただ、だからといって、それが癖を持ったまま歌って良いという事にはなりません。やっぱり上達するためには、このような癖というのをできるだけ取り除く必要があるんです。
その癖には、大きく分けて2種類の癖があります。
一つは、間違った練習をしていてついてしまった癖です。上達をする上で練習する事は非常に大事ですが、間違った練習をすると、とたんにそれが悪い癖となって見についてしまいます。合唱が好きで、声楽のレッスンを受けようと思ったけれど、実はその時にはすでに合唱を通して癖がついていたという経験をした人もいるかもしれません。音大に入って新しい先生に習ったら、前の先生の所で身についてしまった癖を直さなければならなかった、という人もいるかもしれませ遠。歌というのは楽器とは違って、自分の声を自分で聴くことができないので、その判断をするのがとりわけ難しいです。なので、癖を指摘してもらわないと、すぐに悪い癖が身についてしまうんです。
これが最初の癖です。
もう一つは、言葉の癖です。イタリア語、日本語、ドイツ語、中国語、ロシア語、などすべての言葉はそれぞれ発声方法が異なっています。そしてどの言語も残念ながらオペラを歌う時とは基本的に発声が違います。イタリア語のAも日本語のAもドイツ語のAも微妙に違います。そしてオペラを歌う時の母音というのは言葉の母音とは実は全く違います。詳しい話は別な回でしますが、歌う時の母音の位置というのは話をする時よりもずっと深い所でなっているんです。
なので、オペラ歌手になる人は、どこの国で生まれようが、その国の言葉の癖と一生戦っていかなければなりません。
歌手によっては、どこの国の人か聴いてすぐに分ってしまう場合がありますが、それは実はその言語の癖を持ったまま歌っているからなんです。
もちろん言葉によって、オペラに比較的向いている言葉もありますが、そうでない言葉もあります。
日本語は残念ながら、そうではない言葉です。喉の位置は非常に高く、狭いです。標準語は話しているだけで、喉を押し上げながらイントネーションを高めます。関西弁もその傾向が強いです。
僕たち日本人はオペラを歌う時にとは全く違った筋肉を使って話をしています。なので、まずはこれを徹底的に取り除く事をしなければいけません。これは決して簡単ではないですが、僕は数年間かけて、その癖を徹底的に取り除く方法を身に付けました。
これの一番難しい問題は、日本にいると、日本語の癖にはなかなか気が付けないという事になります。それは日本語は当然僕たち日本人にとっては生まれたときから聴いている自然な言葉だからです。
なので、耳から変えなければいけないです。それが癖だと知る事から始めないといけないんです。歌手の中には、外国に来て初めてその癖に気が付いて、一からやり直したという人も決して少なくないです。
歌が上達する上での第1歩はこうした癖を取り除く事になります。
良い声を出すために本当に必要な筋肉を鍛える!
癖を取り除くのと同じぐらい大事なのは、歌を歌う上で本当に必要な筋肉というのを鍛えていくという事になります。
僕たちは歌っている時に自分の体の中を見ることが出来ません。なので、感覚的になんとなく歌うと言う事を覚えていく事になります。
でもすべての動きは筋肉の動きです。歌を歌うには、必要な筋肉というのがちゃんとあって、そういう筋肉を鍛えていく事で声が育っていきます。
高い声を出すには、声帯を伸ばしてあげる必要がありますが、そのために声帯の伸縮を支える筋肉が必要です。息をコントロールするには呼吸を支えるための筋肉が必要です。
詳しい筋肉の話は別な回でする予定ですが、こうした筋肉を自分の意志で動かして鍛えていくような練習をする事で初めて声というものが継続的に成長していくのです。
必要な筋肉が成長する事で、本当の意味で、大きく豊かな響きをもった声というものが出てくるようになるんです。
ただし正しい筋肉というのは、癖を取り除かないと鍛える事が出来ません。癖があると言う事は間違った筋肉を使ってしまっているという事だからです。ダンベルトレーニングでも間違った腕の動かし方をしていては、筋肉を鍛えることはできません。大事なのは、しっかりと筋肉を意識したトレーニングをしていく事なんです。
僕たちは1回のレッスンで劇的に声が変わる事を期待してしまいがちなんですが、本当に良い声というのは、決して何かきっかけをつかんだから出るというものではありません。それはそのような良い声を出すのに必要な筋肉が身についていないんだから、当然です。
これは比較的長期的なプロセスになりますが、長い人生で考えたら、ここをしっかりやるかどうかで、その後の歌手人生が全く違ったものになります。
きちんと歌う上での体の動きというのを理解して、正しい練習をして、正しい筋肉を鍛えていくというのが、歌う上で最も重要なプロセスになります。
音楽を学ぶ!
しかし歌の上達において重要なのは、こうした技術面だけではありません。何よりも大事なのが音楽を学ぶ事です。音楽と技術は両方同じぐらい大事です。でもどちらが大事かと聴かれたら僕は迷わず音楽だと答えます。
僕は技術はある程度年を取ってからでも学ぶ事が可能だと思っています。世の中には50歳を過ぎてからマラソンを初めてフルマラソンを完走する人も沢山います。
だけど音楽だけは、ある程度若いうちにその感性を身に付けておかないと、年を取ってからは中々学ぶのが難しくなります。歳をとるについれて、新しい感性に対する窓口というのが狭くなってしまう場合が大きいからです。
音楽家としての自分を導いてくれるのは、常に音楽です。技術を身に付けたら、実際にどのように歌うのかという事が大事になってきます。でも音楽を知らなかったら、どのように歌えば良いのかちっともわかりません。
私はこう歌いたいんだ、そのような気持ちがあるからみんな歌を勉強したいと思います。その時どう歌えば良いかを教えてくれるのは、先生や指揮者ではなくて、音楽なんです。
音楽をちゃんと知っていれば、作曲家が自分の先生となって、必ず良い方向へと導いてくれます。
音楽を身に付けるよりも先に技術を身に付けてしまうと、技術を優先した独りよがりの歌い方になっていまいがちです。どう歌えばよいのか、その指標がないからです。
若い頃はとにかく技術を身に付けるのと同じぐらい、音楽を学ぶ事に情熱を注いでください。それがプロになる上で、非常に大事になります。
と言う事で、今回は声楽、歌が上達するために抑えるべき3か条について話をしました。
それでは、また次のレッスンで!
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